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シェフとキャンプ飯

一度しか大人キャンプを経験していない分際で、私にはキャンプのことを偉そうに言う資格はないのですが、キャンプのお話の続きです。


キャンプをしている人々のいわゆる「キャンプ飯」、かなり見ごたえがありました。ファミリーで来ていたある人たちは、テントやタープや車を巧みに使って見事にリビングルームとキッチンを作り上げていて、その前を通るたびに、何かしら作って食べているのが見えました。


夜には特大ブロシェット、翌朝は巨大なハンバーガー。「なかなかやるな」と感心したその数十分後、なんと今度は焼き芋を食べています。人様のことだから静観していればいいのに、「あの家族、また食べてる!」と、つい同行の面々に報告すると、皆が一発でどのキャンパーなのかわかってしまうほど。なんとも迫力のあるご家族でした。


かたや、一人でバイクで来ていた男性は、朝、富士山を眺めながらカップラーメンを食べていて、「これもおいしそうだな」と思いました。結局なんでもおいしそうに見えて、なんとも楽しい人間観察をさせてもらいました。



ところでシェフ金子、実は映画好きです。あまりにも昔の映画で私にはさっぱりわからないけれど、『荒野の七人』や『夕陽のガンマン』を観て、男たちが焚き火で煮た豆(ポークビーンズでしょうか?)を食べているシーンにずっと憧れていたのだそう。


珍しく話したそうだから、「今までキャンプで食べていちばんおいしかったものは何?」と聞いてみました。



「そうだな、香田は凝り性だから、あらかじめ準備してくれたモツ鍋やおでん、寒い時期に最高だった」(そういえば、営業の合間におでんを煮ている鍋を目撃しました。うちはフランス料理屋なのに)


「バウルーでホットサンドを作ったり……あ! バウルーで肉まんを焼くと最高だよ。朝日が昇るのを見ながらのモーニングコーヒー! これがまた最高」



「朝飯はメスティン(最近は飯盒ではないんですね)で炊いたごはんに、目玉焼きと明太子をのせて食べるのが最高の組み合わせ! 朝からビールやハイボールを飲んで酔ったところで、昼に食べる卵入りのインスタントラーメン、これがまた最高に旨い」


「夜は前菜にアヒージョ、パスタを必ず少し食べて、肉を塊で焼いて、ただ塩こしょうだけで食べるのも最高だ」



なんだか最高だらけですが……私から言わせてもらえればただのデブ飯です。


「仕事で作る料理は、お客様からお金をいただく料理だから、常に緊張感を持ってベストを尽くすわけだけど、キャンプ飯は自分のためだから、食べたい時に食べたいものを自由に食べる。結果、何を食べても最高に旨い!」


普段、何を聞いても話しかけてもろくに返事も返ってこないのに、キャンプの話になると全くの別人です。



「でもね、キャンプ飯をいちばん旨くしてくれるのは、実は焚き火と自然なんだよ。匂い、音、色、本当に癒される。焚き火の炎をじっと見ながら飲むお酒。もう最高だよ」


……どちらにしろ、私にはいくら聞いてもあんまりよくわからない、長い長いキャンプ飯のお話でした。

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