テイクアウトはじめて物語(その6)

コロナ一色の2020年も、終わりが近づいてきました。


そしてとうとうやって来たのが、我々が一年のうちでいちばん緊張する年末です。忘年会があり、ノエルがあり、最大の大仕事であるおせちがある年末。それは、我々飲食店が最も期待する「稼ぎ時」であると同時に、その忙しさから舞台裏には殺伐としたピリピリした雰囲気が流れる時期でもあります。


ただ、今年はどうだろう?「外食は控えよう」という独特の空気があるので、店内営業は例年のようにはいかない予感です。おせちもしかり、でしょう。4月、5月の世の中のテイクアウトブームで、人々はもうテイクアウトに飽きており、お値段の張るおせちをあえて買う人はあまりいらっしゃらないのではないか? 今年はおせちの需要は少ないでしょう、と我々は予想したのでした。



おせちはいわば、テイクアウトの「女王様」的存在。作る側の気の遣い方もハンパではありませんが、それならいっそ春に打ち立てた、サンルスーのテイクアウトのテーマである「遊び心」を、女王様にも応用してみよう。


毎年、年末の忙しさを思うと少しだけ憂鬱になるのですが、今年はテイクアウト営業を経験して学んだこともずいぶん多かった。今年の12月はたぶんいつもより暇そうだし、売り上げがパッとしない分、気持ちを少し楽にして、年末の仕事を楽しもうということにしました。


ミーティング中、普段は「盤石」をモットーとするシェフ金子が珍しく「今年は三段重のうち、三段目を選べるようにしよう」と言い出しました。こんな前向きな発言は10年に一度くらいしかないので、気が変わらないうちにさっそく採用。「肉の重」「魚の重」から選べる形が決まりました。ちょっと不安だけど、なんだか楽しくなってきました。


「テイクアウトで培ったノウハウを生かして、『肉・魚・洋食』の三択にしませんか?」 出ました! やりたいこと満載のスーシェフ香田が、その3日後に発したまさかの一言。


「女王様」をさらに難解に……。漠然とした不安を抱きながら「でも、どうせ今年は暇そうだから」を合言葉に、この提案を採用。これで決まり!


ところがところが、コロナはそんなに甘くなく、我々は状況を完全に読み違えていたのでした。

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