ワインのないサンルスー

シェフ金子、私ともお酒が大好き。いわゆる酒豪というやつです。長い一日が終わって飲むお酒が楽しみで、日々の労働に励んでおります。


サンルスー入社当時、ほとんどお酒の飲めなかったスーシェフ香田も、我々の仕込み(?)の甲斐あって、すっかりお酒好きになりました。万事おおまかなシェフ金子や私と違って、凝り性な性格ゆえ、ソムリエの資格も取りました。あっぱれな男です。


我々のフランスでの最初の修業先は、南仏のバンドール。仕事が休みの日にレストランに食事に行くと、ほとんどの人がロゼワインを飲んでいます。当時の我々は、ロゼと言えば極甘口のロゼくらいしか知識がなく、ロゼワインはお酒の入門者が飲むものと思い込んでいました。


レストランで赤ワインを飲んでいるのは我々だけ。「やっぱりここは観光地だから、皆初心者向けのロゼなんて飲むんだね。なんだかカッコ悪いね」とか言って、完全に上から目線で偉そうに勝手な分析をしていました。


少し後でわかったことですが、バンドールは質の高い辛口ロゼワインで最も有名な土地だったのです。ダサいのは我々の方でした。


その後、レストランでもちろんバンドールのロゼを注文し、「やっぱりバンドールって言ったらロゼじゃない? このカラッとしてさわやかな気候にキリッとした辛口が合うんだよね!」と、変わり身の早さは天下一品です。


肉料理が充実しているアルザス地方。この地のワインはほとんどが白ですが、アルザスの素朴でおいしい料理とアルザスの白ワインがとんでもなく合うことに驚きました。


我々が日本ではまず飲むことのないボージョレも、リヨンのブッション(リヨンの郷土料理を出す大衆食堂)でお料理と合わせると、いくらでも飲めてしまいます。


パリにある、大好きなオーベルニュ料理の専門店では、日本では滅多にお目にかかれないオーベルニュ地方のワインを経験しました。滋味深い料理のしみじみとしたおいしさと、地味ながら味わいのあるワインの組み合わせに「うーん、合う」とうなったのを覚えています。


フランス各地に行くと、その土地のお料理とワインが不思議なほどピッタリ合って「もしかして、フランスってすごくない?」と感動したものです。



我々にとってお料理とワインは、そんなふうに常にメオトのように一体となっています。3度目の緊急事態宣言が延長となり、お酒の提供ができないサンルスーは、やはりワインをお出しできないのならと、再びテイクアウト営業に専念することに決めました。


お酒を召し上がらないお客様や、お酒がなくてもお食事に支障のないお客様には、大変申し訳なく、またご理解いただけないことかもしれませんが、我々にとって、ワインのないサンルスー、どうしてもあり得ないのです。

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