休業中の厨房から

緊急事態宣言が延長に延長を重ね、コロナの感染状況もますます深刻になる中、サンルスーも営業をどうするのか、もめにもめた挙句、休業を延長することに決めました。


正直、自分達でも何を選択するのがいちばん正しいのかわからない状況です。ただ、数ヶ月前までは完全に他人事だと思っていたコロナが、なんだかヒタヒタと近づいている怖さを感じています。


「とにかく還暦を過ぎると、感染して味覚や嗅覚に障害が残るのが、料理人として何より怖い」。


シェフ金子、普段はことごとく楽観的なのに、今回ばかりはかなり慎重な姿勢。


日頃、何かというと自分の都合のいいように還暦を持ち出すので、「また『還暦』が始まった……」と、私の耳にはタコができかかっていました。しかし今回は、「もしかしてこの人、本気?」どうやら真剣な模様です。


内輪の話ではありますが、スーシェフ香田も二世が誕生してまだ数ヶ月、いろいろ心配事が多くなりました。


商売人としてこれでいいのか? という葛藤の中、苦渋の決断をすることになりました。とにかく早く営業再開できるよう祈るばかりです。



そうなるとまた、屋上ガーデンの野菜やハーブの出番がなくなってしまいます。人間がコロナに振り回されようが一切関係なく、屋上ガーデンの野菜たちはすくすくと育っています。雨が続くと成長もゆるやかになり、自然の力の偉大さを感じます。そこがまたいじらしくて、無駄になど絶対にできません。


必要としてくださる方に配るほかは、ひたすら自家消費です。プチトマトやマイクロトマトなど、生で食べても到底追いつきません。


我が家に配給されたプチトマトを前に、「これでトマトソースを作る!」と宣言すると、「これ、全部湯むきするんですか?」……スーシェフ香田、マジな料理人です。


「そんな面倒なこと私がするわけないでしょ。これはね、ヘタを取って厚手の鍋に入れて、つぶしたにんにくとオリーブ油、塩を入れて、蓋をして、弱めの中火でひたすら煮るだけ」と私。


「見た目はすごいけど、味は濃厚で本当に旨いよ」とシェフ金子。フォローしてくれているのかもしれませんが、何か一言多いようで気になります。


ある日のサンルスー。シェフ金子は店の冷凍庫の大掃除、スーシェフ香田は屋上ガーデンの手入れ、私は自宅の大掃除をしていました。


店からスーシェフ香田の自宅へ帰る途中に、我々の自宅があります。香田が採れたてのオクラやきゅうりとともに、大量に採れたバジルとしそで、それぞれオリーブ油と塩だけで作ったピュレを届けてくれました。


しそのピュレは初めてでしたが、これが最高においしく、使い勝手もよく、すっかり気に入ってしまいました。ただ、それを届けてくれた時の香田がやたらと申し訳なさそうで、逃げるように帰っていったのが気になります。


よく考えてみれば、私はその日、家から一歩も出ず、太もものような二の腕丸出しの大掃除ルックだった上に、顔は能面(ノーメイク)だったのです。


夕食時、それをシェフ金子に伝えると「それじゃ、怖いわけだよ。俺だって時々びっくりするもの」……言っていいことと悪いこと、世の中には絶対あるはずです。

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