深夜、長い一日の労働が終わると「お疲れさん」のお酒を飲むのがサンルスーのならわし。
でも、緊急事態宣言中はなんだか我々もそんな気持ちにはとてもなれず、仕事の後の一杯を飲むこともなく、潔く解散していました。
しかし、今や宣言も解除となり、店でお客様にお酒をお出しできるようになると、ついでに我々も心地良い疲労感から、俄然お疲れさんの一杯が飲みたくなります。
お客様がきちんとマナーを守りながら、本当に楽しそうに食べて、そして飲んでいる光景を見るのはなんとも嬉しく、「皆、楽しそうでいいな」とこちらも楽しくなってきます。
今まで当たり前だったことが、こんなにも感動するほど素敵なことなのかと痛感し、改めて「普通」に営業できるありがたみを感じています。コロナには散々な目に遭うことになりましたが、そう考えると逆に良い経験になりました。
ところでここ最近、労働後のお疲れさんの一杯のときに、スーシェフ香田がやたらと、あまりにも昔すぎる我々のフランス修業時代の話を聞いてきます。
ランチ営業をやっていたコロナ前までは、毎日15時間くらい同じ狭い空間にいるのに、とにかくバタバタしすぎて世間話をする余裕すらありませんでした。シェフ金子と私も日々追われるように忙しく、フランス修業時代のことを思い出すゆとりもなかったのですが、司会者と化したスーシェフ香田に誘導されているうちに、懐かしい記憶が次々とよみがえってきました。
あるときは、アルザスのシュークルートの話。一杯のつもりが、生ビールから始まって白ワイン、赤ワインと次々と杯を重ねることとなり、しまいには呂律が回らなくなるほど空酒を飲んで、気づけば午前様。「いけない! 明日も早いからもう帰ろう!」と慌てて解散です。
そしてある土曜日の夜、お疲れさんの一杯のつまみに、シュークルートが出現しました。すっかり勢いづいて、サンルスーで一番上等なアルザスワインを奮発し、なんとも充実したお疲れさんのひとときとなりました(月曜と火曜が定休日のサンルスーは、あと一日働けばお休み!と思う土曜日の夜が一番リラックスできるのです)。
あるときは、ムールフリットの話。ベルギー料理ですが、我々にとってはパリの専門店でよく食べた、大好きな思い出の一皿です。そして次の土曜日の労働後には、ムールフリットが登場! 次回はブイヤベースが登板予定です。料理に合わせてワインを考えるのも、なんとも楽しい作業です。
スーシェフ香田、ここでも凝りだすと止まりません。これから毎週、我々のあてにならない回顧録をもとに、フランスの思い出料理を再現すると意気込んでいます。
しかし、自分たちばかり思い出に浸って喜んでいてもただの自己満足。「メニューに反映させないと意味ないよ」といちいち口うるさい私の一言にカチンときたシェフ金子。「そんなこと、言われなくても俺が一番よくわかってる!」
本当にわかってるかどうかわからないけど、メニューに載っては消え、載っては消えを繰り返していたシュークルート、数年ぶりに復活することになりそうです!
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