年末に向かい、まだ一つとして形をなしていないのに、気分だけ焦りまくる毎日です。こういう時はたいてい、何かをやらかしてしまいます。
銀行のATMに行くのが、私の毎朝の出勤時の日課なのですが、ある日、店に着いて一通りのルーティンを済ませ、さて事務処理を、と通帳を探すと、どこにもない!……銀行に置き忘れたとしか考えられず、何度電話をしても一向につながらないので、銀行へ戻りました。
窓口に行って、通帳を預かってもらっていることは確認できたのですが、返してもらうのは至難の業。そのことは何度かやらかしているので熟知しています。
いちばん簡単なのは、通帳の名義人であるサンルスー代表取締役のシェフ金子が、銀行印と身分証明書になるものを持っていくことなのですが、ここ最近のシェフ金子は、本名の金子淑光から、年末に向かって恒例の「金子愚痴光」に改名し、ヒーヒー言いながら、なぜかすれ違う時にだけグチグチと泣き言を言っています。
毎日「時間がない」を連発されてこっちもうんざりしているので、対応してくださった銀行の方に「忙しいので『銀行に行って通帳を返してもらってきて』なんて、怖くてとても言えません!」と、100%自分が悪いクセに履き違えたことを言うと、銀行の方は本当に申し訳なさそうに何度も謝りながら、別の2つの方法を教えてくださいました。
でも結局、手間が余計にかかるだけで、やはりどこかの時点で代表取締役が登場しなくてはなりません。今、様々な犯罪があるのでやむを得ないとのこと。本当にごもっともで、犯罪者といい、私のようなうっかり者といい、銀行さんにはいい迷惑です。
次の日にはどうしても通帳が必要だったので、嫌で仕方なかったけど謝りまくり、おまけに一食おごらされて、翌日、代表取締役に銀行に行ってもらいました。
朝、銀行に行ってから出勤したシェフ金子が言うには、銀行の方がやたらと申し訳なさそうに対応してくださり、手続きの最中に、練馬野菜の仕入れに行っていたスーシェフ香田から相談の電話が2回かかってきたのを目の当たりにして「本当にお忙しいんですね。誠に申し訳ありません」とおっしゃったとのこと。
それを聞いて私、「これはまずいことになった」と思いました。その過剰なほどの銀行の方の対応には、ちょっと思い当たるフシがあるのです。
前日、私が銀行に直談判に行った際、「どうしよう。すごく怖いんです! 私、ぶたれるかもしれない」と、ついついいつもの調子で大仰な物言いをしてしまったのです。もちろん、そんな駄々をこねても通帳は戻ってくるわけはありません。それを聞いた銀行の方が「そ、それはいけません! 別の方法でいきましょう!」と一生懸命いろいろ教えてくださったのでした。
ここは真面目な銀行員の方々の世界。場所を完全に間違えました。正直にこの話をすると、「おいおい、やめてくれよ。俺、そんなことしたことないぞ。どうもおかしいと思った」とシェフ金子。はい、もしそんなことしたら倍返しです。
本当にたった1秒の私の不注意で、いろんな人に大変な迷惑をかけてしまいました。その後、シェフ金子が何かにつけ「あぁ、あの時の時間のロスが完全に響いた」という嫌味にも誠に不本意ながら、ひたすらじっと耐えるしかない私です。いまだに仕込みの間に合わないメニューに文句を言うと、この事件を持ち出され、全く踏んだり蹴ったりです。
私のような粗忽者はそうはいないと思いますが、皆様、年の瀬の慌ただしいこの時期、くれぐれもちょっとした不注意にはお気をつけください。
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