群馬県川場村から新潟を経由して、山形県にやってきました。
山形県は、おいしいものがたくさんあって大好きなのです。置賜地域と村山地域には何度か行っているのですが、庄内地域は未経験。憧れの鶴岡・酒田に突入です。
休暇直前、山形の庄内に行くと行ったら「酒田においしいお鮨屋さんがあるよ」とおいしいものにやたらと詳しいお客様に教えていただき、素直な我々はもちろん伺ってきました。
自分で一切しょうゆをつけない、あまりにも見事なお鮨に「また明日もここにするか!」とシェフ金子。全く、人生万事無計画な人は、簡単にいろんなことを言い出します。私だってそう願いたいけど、諸事情からそれも叶わず。でもまた絶対に伺いたい、素晴らしいお店でした。
鶴岡といえば、私、ずーっと前から「生きている間に一度は行かなくちゃいけない」と心に決めていた農家民宿レストランがあります。そちらに伺うことを提案した時「う・うん、い・い・いいよ」と、明らかに乗り気でないシェフ金子。
でも、そんなの構いません。ぼんやり生きている人は無視して、お昼の予約を入れちゃいました。
実際、車でなければいけない場所。周りは畑だらけです。「それにしてもすごいところにあるなあ」とシェフ金子。手入れの行き届いた風流な純日本家屋でいただく食事です。
お昼のお膳が出てきて、思わず「うわー、すごーい!」と二人でハモってしまいました。すると女将さん、「何にもすごいことない」とおっしゃる。こういうこと言う人、たまらなく好き!
お料理の一品一品が、あまりにも丁寧に上品に作られていて、日本人として絶対に忘れてはいけないものを食べさせてもらった気持ちになりました。帰り際、素晴らしい食事にお礼を言うと「こんな普通の田舎料理、当たり前すぎて近所の人は誰も食べに来ないよ」とおっしゃる女将さん。ああ、ますますいい感じ!
お店を後にしてから「ねえ、ちょっと、どうだった?」とシェフ金子に聞くと「一言で、素晴らしい! 俺のイメージでは、味が濃くて甘くてちょっと野暮ったいものが出てくるんじゃないかと思ってたけど、食材と食べ手に愛情を持った、こんなに洗練されたものが、こんなにさりげなく食べられるとは全く思ってもみなかった!」
当たり前です。私、10年以上前から絶対に来たいと恋い焦がれていたわけですから。本当にこちらに伺ってよかった。しみじみと原点に戻ったような気持ちになりました。
我々、「こだわり」と言う言葉が少々苦手です。よく商業的な売り文句として、こちらが聞いてもいないのに「地産地消で頑張ってます!」「こだわりを持ってます!」みたいな言葉が使われますが、それを押し付けられると「ねえ、なんか、帰りたいね」と逃げ出したくなってしまうのです。
本当にすごいことをしている方々は、自らは決してそうは言いません。それが鹿教湯の宿、川場村の「VENTINOVE」、鶴岡の農家民宿レストラン。図らずも共通していることに気づきました。わざわざ声高に言わなくても、受け手はわかるもの。
常に店主が店(宿)にいて、誠実な料理を提供してくださる。土地の食材に、敬意と誇りと愛情を持って向き合っていらっしゃる。いつも謙虚で、とてつもなく大変なことをしているのに、いとも簡単にしているような雰囲気を醸し出す。そして皆さん、共通して「いい顔」をしていらっしゃる。
それにひきかえ我々ときたら、大したこともしてないクセにいつも大変ぶって、「大変」がコックコートを着ているシェフ金子と、「大変ハチマキ」をして店内を歩き回っている私。大いに反省し、そして今回の旅でも大切なことをたくさん教えていただきました。
皆さん、本当に本当にありがとう!
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