「よし、明日から本腰を入れて真剣に始めよう」。
シェフ金子と私が今までに何十回、いえ何百回も交わした会話です。かれこれ20年以上、立派に長い年月です。何のことか……それは紛れもなく「ダイエット」。
職業柄、仕事が終わるのがどうしても深夜になってしまい、それなら食べなきゃいいのに「それじゃ何のためにこんなに身を粉にして働いているのかわからない」とか勝手な言い訳をして、深夜にもれなくお酒付きの食事をする……結果は明らかです。
こんなこと自慢にも何もなりませんが、店を始めて私、10kg以上太りました。そして「店さえやらなきゃ、私、ずっと痩せてたのに」とすぐ人や環境のせいにします。
そういえば十数年前、「健康のため、痩せるためにウォーキングをしよう」といつになく意気投合し、何かにつけて形から入る我々は上から下までバッチリと(?)身支度を整え、意気揚々とウォーキングを始めました。とても充実した時間でした。
ところが翌朝、窓の外を見ると雪が降っています。「転ぶといけないから今日はやめておこう」。こういう時の意見の一致のすばやさといったらありません。そしてその後、二度とウォーキングをすることはありませんでした。ウェアは寝巻きに、シューズは化石になりました。
「コロナ太り」、最近本当によく耳にする言葉ですが、そもそもコロナ前からの課題にもかかわらず、我々も例にもれず「コロナ太り」を頻繁に口にすることになります。
コロナ禍で本来の仕事もままならず、大好きなキャンプにも行けないスーシェフ香田、凝り性な性格ゆえ、キャンプ道具の代わりにスマートウォッチなるものを入手し、体づくりに励んでおります。
朝のジョギングを夜のジョギングに切り替えて、その科学的な意義を滔々と我々に説くのですが、はっきり言って内容が高度過ぎて我々にはさっぱりわかりません。
「走るのはちょっとな。俺、もう還暦過ぎたし」。都合が悪くなると何かと還暦を持ち出すシェフ金子。そこでスーシェフ香田が「ウォーキングで充分効果ありますよ」と百歩譲ってるのに、「俺、朝弱いからな。夜は暗くて気分が下がるし、蚊に刺されやすい体質だし」。
自らも含めての分析ですが、デブは言い訳が多いのです。そして確実に自分に甘いのです。よく考えてみると、痩せている人は意志が強い人が多いようです。
片や我々ときたら「痩せる」のもいつも今日からではなく明日から。そして「明日からは本腰入れるから、今日は体を休めて、食べ納めをしよう!」……そしてこの言葉をまた翌日も言い続けて二十数年が経ちました。
シェフ金子曰く「早く普通に営業できるようになりたいな。そうしたら自然と痩せると思うんだよ」。こんな他力本願な性分だから、一向に痩せる兆候が現れるわけがありません。
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