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秋の食い倒れ旅〈うどん県再訪編〉

私事で大変恐縮ではございますが、私、この世の食べ物の中で「うどん」がいちばんの好物です。


子供の頃、祖母が打ってくれたゴツゴツした手打ちうどん、私の故郷では干ししいたけと油揚げの入ったつけ汁につけて食べるのがお決まりで、子供心にうどんの日は「今日はごちそうだ!」と大喜びしたものです。


もう讃岐うどんのブームは始まっていたと思われますが、2001年、食べ飲み仲間6人で「讃岐うどんツアー」を決行しました。2日間で11軒のうどん屋さんを巡り、夜は居酒屋さんをハシゴしたのですが、とにかく驚いたのはうどんの価格! 100円、200円の世界です。


更にもっと驚いたのは、信じられない程のクオリティの高さ! 本当に本当に感動しました。「おいしいものはお金を出さないと食べられない」と思い込んでいたので、この経験は衝撃でした。



今回、四国旅行を決めた際、限られた日程の中で香川県に2泊を取ったのは、あのうどん三昧をもう一度!と考えたからです。さすがに23年前とは同じように食べられず、今回巡ったうどん屋さんは5軒。夜は骨付鳥のお店とお鮨屋さんに決めていたので、少々加減することをこの歳になって学ぶようになりました。


香川県には、とにかくたくさんのうどん店、製麺所がありますが、我々が目指すのは昔ながらのお店です。 こういうところは大抵、秘境と呼ばれるようなびっくりする場所にあるものです。



今や讃岐うどんは日本中で食べることができるけれど、やはり本場は違います。何が違うって、店が醸し出す独特の空気。そして、朝から抜群においしいうどんが食べられることです。「朝うー」たまりません!


秘境のうどん屋さんをハシゴしていると、大抵同じ顔ぶれの人に出くわします。 これ、23年前もそうでした。でも、前回行った時と大きく変わっていて、驚いたことがありました。


2000年代のものすごい讃岐うどんブームの影響で、畑の中にポツンとあるようなうどん店が何十台分の駐車場を完備していたことです。 200円位のうどんに、です。


お店の方曰く、「ご近所さんあってのうちなので迷惑はかけられない」とのこと。だから、本来需要の多い日曜日やゴー ルデンウィークはお休みするのだそうです。「なんて素晴らしいんだろう!」うどんの美味しさもさることながら、その気持ちの持ちように感動すること、この上ありません。


また、この旅でちょっと気づいたことがありました。兵庫県の明石焼きのお店もそうでしたが、古い昔ながらのうどん屋さんばかり行ったからなのか、 お借りするトイレがことごとく和式なのです。和式トイレを使わなくなって、もうどれ位経つだろう? どうやって用を足すのか、もじもじしてしまいました。


ある製麺所では、シェフ金子がトイレを借りて、さて、では私も、と思ったところで「あんたは入らない方がいいよ。65年の人生の中でいちばんすごいトイレだった」と言われました。


最近は駅でもサービスエリアでも、公共のトイレは私が子供の頃と違って、わりとキレイです。ましてやお店などはとてもキレイです。どんなにすごいトイレか興味がありましたが、私、グッと尿意を抑えました。でも、こういう全然構わないところも、なんか自然体でいいな。


別の製麺所では、「お姉さん、どこから来たの?」と聞かれ、東京だと答えると 「じゃあ、お兄さん(シェフ金子です)はかけ、お姉さん(私です)はぶっかけ、それで食べ比べなさい!」


うどん好きの私は、自分のことを「うどんのベランダ (ベテランのこと)」だと自負していて、讃岐うどんは究極は「かけ」だと思っているので、かけで食べたかったのですが、怖くて逆らえませんでした。


「はい、お兄さん! まずだしだけ飲んで! はい、次はねぎとしょうがをのせて! はい、飲んで!」


シェフ金子がオロオロしながら指示に従い、 「うまい?」と威圧的に聞かれると「はい、うまいっす」とちゃんと筋書き通りに答えていました。とにかく、味、値段、秘境、トイレ、命令までやっぱり讃岐うどん! 最高です!


他人の旅の話なんてどうでもいいですね。でも次は高知県のお話です。お許しください。(続く)

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