紳士は肉じゃががお好き

以前の記事にも書きましたが、今年に入ってからスーシェフ香田、サンルスーの幻のメニュー探しに躍起になっています。


度重なる緊急事態宣言で、テイクアウト専業のOBENTOYAになったり、店内営業に戻ったりといった状況の中、私なんてはっきり言って自分が何屋なのかわからなくなり、落ち着かない日々を送っているわけですが、店がどんな状況にあっても、香田は幻のメニューにこだわり続けます。いったいどこから探り当てたのか、ある日遠慮がちに言いました。

「シェフ、以前ベックオフやってましたよね?」


それを聞いたシェフ金子の表情をみて、勘の鋭い(?)私は一発でわかりました。

「ね、ベックオフのこと、忘れてたでしょ?」

聞かなくてもいいことをわざわざ聞くのは私の悪い癖です。シェフ金子、もちろんムキになり言いました。

「そんなことはない! 俺はベックオフは大好きだ。いつも頭の片隅にあった!」


こういうどうでもいいやりとりはさておき、記録もメモもほとんど取らないシェフ金子は、脳裏から完全に消えていたベックオフをスーシェフ香田の一言でハッと思い出したのか、「そろそろやろうと思っていた」としらじらしいことを言い出しました。


ベックオフ、再登板です!



店内営業を再開した3月中旬、満を持してメニューに復活したベックオフ。ご注文絶好調の兆しが見えたところで、またもや緊急事態宣言。図らずしてまたOBENTOYAになってしまったサンルスーですが、当初の方針は店内メニューとテイクアウトメニューをなるべく別にする、というものでした。


でも、テイクアウトをご利用いただくお客様のさまざまな事情がわかったので、じっくり話し合った結果、今回はなるべく店内メニューをテイクアウトに、ということになりました。ベックオフも、テイクアウトメニューでお出しすることに決めました。


20数年の間に、何が起きたのでしょう? 当時は一部のお客様を除いてパッとしなかったベックオフが、どういうわけか今、まるで女王様のような輝く存在に。店内営業のデータですが、これまたどういうわけか、男性のご注文が圧倒的です。


サンルスーの開店当初から通ってくださっている、あるおなじみの男性のお客様から、テイクアウトでベックオフをお買い上げいただいた日、お食事中に電話がかかってきました。


何か手違いでもあったのかと思ったら、「ベックオフって初めて食べたけど、これは肉の饗宴だね! どうもありがとう! じゃ!」


と、言いたいことだけ言って電話は切れました。まるでテレビでよく見るグルメリポーターのようなセリフです。ベックオフをテイクアウトでもお出ししてよかったと思った瞬間でした。


考えてみればベックオフは、アルザス風の肉じゃが。日本男子、洋の東西を問わず、どうやら肉じゃががお好きなようです。

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