ひょんなことからこのブログを始め、なんとか今日まで続けてこられました。
もうずいぶん前のことのように感じますが、店の在り方が一変した2020年春。30年近く店を営んできた中でも、かつて経験したことのないことに次々に遭遇しました。世の中っていとも簡単に、こんなに変わってしまうんだ、と渦中にありながらまるで他人事のような、不思議な感覚を持ちました。
コロナ禍に巻き込まれたことをきっかけに、サンルスーではそれまでこれっぽっちも考えたことのなかった、ウェブサイトを作ることになりました。
「今どき何言ってるの?」という感じですが、それまで頻繁にかかってきていた「ホームページを作りませんか?」の営業電話にも、我々の心はピクリとも動きませんでした。「サンルスーを知らない人が作っても、お客様にサンルスーのことは伝わらない」と頑なに考えていたからです。
コロナのため、いつもの当たり前の営業ができずにいたあるとき、スーシェフ香田が頑張ってくれているサンルスーのSNS(私は全くのノータッチです)に、サンルスーのオープン当初からのお客様から、一本のメッセージが入りました。
大変なご時世だけど応援しています、できることがあったら言ってください!というメッセージの最後に、「例えばですが、お店のウェブサイトを作りませんか? もし興味があったらお手伝いできますよ」とありました。
サンルスーにずっと長いこと通い続けてくださっているTさんは、私と年齢も近く、あれは大好きな『鬼平犯科帳』の台詞を拝借すると、いわゆる智恵美の「勘ばたらき」です。「Tさんなら任せられる!」彼女が醸し出すおしゃれな雰囲気も、お願いする決め手になりました。
そんなこんなで4年前、サンルスーの初めてのウェブサイトができたのです。
このTさん、その後も会うたびに「マダム、ブログもやりませんか? サンルスーのこと、もっと伝わりますよ」と言ってくださるのですが、本当に時代錯誤も甚だしいことは百も承知の上で、そもそも自分たちのことを自ら発信することに、どうしても抵抗がある上に、何より「私が書いたものなんて誰も読まない」と確信していたので、いつもうやむやにしていました。
でも、もう一つ新しいことを始めるきっかけはやってきました。
コロナを経験して仕事の在り方をじっくり考えることとなり、それまでどうしても「何か違う」と感じていたランチ営業を、思い切ってやめることにしました。そもそもサンルスー(一文無し)の分際で「私、貧乏でいいや。仕事ばかりに追われない、人間らしい生活がしたい!」と大それたことを考えたわけです。
しかし、長年の商売人としての習性が身についてしまい、「商人(あきんど)たるもの、楽しちゃいけない」と四角四面に考えていたので「辛くてたまらなかったランチ営業をやめる代わりに、何か一つ自分に課さなければ」と心に決め、「苦手な分野だけどやってみよう」と思ったのがブログでした。我ながらとても不純な動機です。
いざ始めてみると、嬉しいこともありました。「もう長いことサンルスーに通っているのに、マダムと話したことはあってもシェフと話したことがなかった。シェフのこと、初めてわかった気がする」と複数のお客様から言われました。また、サンルスーのメニューのことを書くと「料理一つ一つにいろんな物語があるんですね」「私の好きな○○、こんなに手がかかっているなんて知らなかった」などと言っていただきました。
あるお客様は、ブログに書いた料理をご来店のたびに必ず、何もおっしゃらずに召し上がり、静かに帰っていかれます(今時の言葉を使うと、しれっと)。「〇〇さん、そういうあなたがたまらなく好き!」と、心の中で抱きついています。
シェフ金子、本当に無口で口下手なので、店や仕事について思っていること、サンルスーの料理のことなど、自ら話すことはほとんどありません。でもブログを書くにあたって、自分から話すのを嫌がるシェフ金子から、店や料理への思いなどを聞き出す機会ができたのは、意外な収穫でした。普段考えているのはキャンプと車のこと、あとはひたすらボーッとしているように見えていたので、「なんだ、この人ちゃんと仕事してるんだ」と妙に感心したものです。
世の中には長年にわたって頻繁にブログを更新している方が本当にたくさんいらっしゃることを思うと、ただただ「すごいな」と畏敬の念を抱くばかりです。実際、自分がブログを書くようになってかれこれ4年近く。「ブログを続けるってこんなに大変なものなんだ」と痛感し、自分の仕事の遅さに日々絶望していますが…。
Tさんが先日、「マダム、次で100本目ですよ! マダムのブログ、テーマが豊富でいつも面白いし、そもそもお店が忙しいのに、濃いブログをきちんと地道に書き続けるなんてなかなかできません。すごいですよ」とねぎらってくださいました。
Tさんがそんなふうにいつも励ましてくれ、そしてお世辞だと思いつつも、お客様が「楽しみにしています」と声をかけてくださると、根が単純なものだから「じゃ、もう一つだけやってみるか!」と思い、現在に至ります。
というわけで、なんとか智恵美のブログ、100本目になりました。いつも温かいお言葉をくださって、ありがとうございます!
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