30周年フォトギャラリーのこと
- vivstudio
- 6月26日
- 読了時間: 4分
5月のある日、サン ル スーのウェブサイトを制作・管理・運営してくださっている智恵美のお世話係のTさんが「記念すべき30周年を迎えるにあたり、何かホームページでも楽しいことをやりましょう!」と、いろいろ楽しい提案をしてくださいました。

その提案の中には、シェフ金子や私が「動画でごあいさつ」みたいなものもあったのですが、商売をやっている身で誠に不心得者ながら、我々、自己表現すること、華やかなこと、人から注目されることが、ことのほか苦手。「ねえ、この姿、人前にさらしたくないんだけど」「お客さんが減ることは確実だな」とか、勝手なことばかり言うわけです。
結局、「30年間の懐かしのスナップを集めて、記念アルバム的なページを作る」ことに落ち着きました。自分たちでは、到底思いつかない発想です。
日々大したこともしていないのに、いつもやらなくちゃならないことに追いまくられている私。「写真探しをする時間があるんだろうか?」と、とても不安でした。
とにかく「写真」と書かれている箱にポンポン無造作に放り込まれた中から、掲載する写真を探すことから作業開始です。
すると、普段こういうことに全くノータッチなシェフ金子が「俺も探す」と言い出します。若干嫌な予感がしたものの、せっかく本人が珍しくヤル気を出したので、一緒に発掘作業にかかりました。
「おいおい、ちょっと見てみ、こんなのも出てきたよ。懐かしいなあ」…やはり私の予感は的中し、関係のない写真を手に取っては脱線ばかりしています。
「ねえ! 私、毎日秒単位で生きてて忙しいから、寄り道しないで!」と常に忙しぶるのは私の悪いクセです。でも思いのほか、なかなか楽しい作業でした。

そう言えば「30周年に際し、お客様に向けて、お二人から何かごあいさつのメッセージを」とお世話係のTさんからお話があり、「俺がやる!」とシェフ金子が言い出した時には、本当に耳を疑いました。
店を始めて30年、こんなこと、シェフ金子が言ったのは初めてです。「本当にこの人、大丈夫かなあ?」と不安で仕方がありませんでしたが、この先こんなことを言い出すことはなさそうなので、勇気を出してお任せです。
6月のある休日、シェフ金子が自室にこもって、あいさつ文を書いていました。誰も読めないような汚い字で書いた下書きを見て「ちょっと! こんなおバカさんみたいな文やめて!」と、思い切りダメ出ししたら、本気で激怒していました。
その話をすると、「その下書き見せてください」とTさん。「硬派でとてもかっこいいと思いますよ。素敵じゃないですか!」という予想だにしない反応には、心底驚きました。あの下書きを読めるなんて天才! そしてそれを褒められるなんて女神! そしてTさんの力も借りて、なんとかシェフ金子のあいさつ文ができ上がりました。

さて、フランス修業時代から年代を追って並べた写真を見て思ったこと。「ずーっと『大変』としか思っていなかったけど、こうしてみると、何か楽しそうじゃない?」まるで他人事のように感じます。
そして、「あぁ、我々はやっぱり、いろんな人との出逢いに恵まれてきたから、今まで店を続けることができたんだ」と気づきました。
たくさんの飲食店がある中で、サン ル スーにずっと通い続けてくださっているお客様。何気ない優しい一言に、どれだけ励まされてきただろう?
サン ル スーの重労働に文句ひとつ言わず、頑張って働いてくれる歴代スタッフたち。Tさんをはじめとする、サイドからサン ル スーをがっちりと支えてくださる皆さん。
様々な場面で出逢った大切な盟友たち。何かとくじけキャラの私を、何かにつけ助けて励ましてくれる一族や、かけがえのない親友たち。
ここ最近歳のせいか、我々、夜中に一杯やっている時に何かと同じことばかり言っています。「やっぱり最終的には人だよ。人って必ず何かを教えてくれるし、この人、いい!って思えるのって、有難い」
とんねるずじゃないけど、すべては「みなさんのおかげです」。
サン ル スーを取り巻く皆様、本当にありがとう!
そうそう、この30周年のフォトギャラリーを振り返り、私はひとつ大きな決心をしました。
「ねえ、30年のアルバムを見て、決めたことがあるんだけど」
「俺も!」
「私、痩せようと思う!」
「いやー、偶然だよ、俺も!」
四六時中同じ空間にいるせいか、考えることまでおんなじになってしまいました。本当に勘弁してほしいものです。

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