5月のテラスで

我々にとって気忙しくもありがたいゴールデンウィーク(営業制限なしは3年ぶりです!)が終わり、幾分気持ちに余裕が出てくる今の時期。今年は何となく雨の日が多いように感じますが、5月は大好きな季節です。


カラッと晴れたすがすがしい気候の5月になると、毎年必ずシェフ金子が発する言葉があります。


「あぁ、天気がよくて気持ちがいいな。こんな日はテラスで、サラダにさっと炙ったサーモンをのせてギュッとレモンを絞って、パリパリのバゲットと一緒にキンキンに冷えたミュスカデ(ロワール地方の辛口の白ワイン)でも飲みたいな。ね! 今度の休み、そうしない?」(ちなみに、食べたいものと飲みたいワインは毎年変わります)



それを聞いていつも私、「また始まった」と思うわけです。日頃の行いが悪いのか、そういうときにやってくる休日はたいてい雨(サンルスーの定休日の月曜は本当に雨が多いです)。気分は下がる一方です。


そして何より、私から見ると、時間の使い方がうまくないシェフ金子。たとえ天気のよい気持ちのいい休日でも、「あぁ、店に行って仕込みしなきゃ」と言って店に出かけていくのがお決まりで、数日前に自分が言ったことなんて完全に忘れています。


よく考えてみると、そもそも我が家にそんな優雅な時間を過ごすテラスなんてありません。いくら頼んでも忙しぶってめったに草むしりをしないため、畳2畳ほどの庭は、雑草と虫たちの楽園です。それに住宅密集地の小さなベランダで、デブが2人ワインなんて飲んでいたら、ご近所さんは洗濯物も干せません。大変な近所迷惑です。


「ねえ、うちにテラスって無くない?」と言うと、「イメージなんだよ、肝心なのは。季節や気候によって、こういうものが食べたい、それにこんなワインを合わせたいってイメージが湧いてくる。そういう感覚を大事にしたいと思うんだよ」とシェフ金子。


さすが料理人! いいことを言うなと感心して、このさわやかな季節に私が食べたいと思うものをイメージしました。そして休日の前の晩、こう言ってみました。


「私、グレック(野菜のギリシャふうマリネ)にいろんな魚介のマリネを添えて、シャンパンが飲みたい!」


するとシェフ金子「あ! 週末の営業でそれ全部終わっちゃった」……本当に終わったかどうかわからないけど、叶えてもらえたためしがありません。


「ふん! 金子ケチ光!」(本名は淑光です)と悪態をついて、いつもと変わらない仕事に明け暮れる休日を過ごすことになるのです。

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