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パリの味、ムール・フリット

食べ歩き、大好きですが、特にパリでの食べ歩きがとても楽しい!(と言っても、他の国、あんまり行ってません)


パリでの食べ歩きの中で何が楽しいって、さまざまな外国の料理が食べられること。マグレブだったり、中近東だったり、ベトナムだったり、日本とは違う感覚の中華だったり。そうそう、我々がフランスで食べ歩いた中でいちばん数多く行ったのは、パリの5区にある中華屋さんです。パリに行く大きな目的の一つがこの中華屋さんに行くことでした。そんな中、我々が魅せられたものの一つに「ムール・フリット」があります。


今はわからないけど、20年くらい前、パリにはファミレスのようなチェーン店の ムール・フリット屋さんが何軒かありました。手頃な価格で、気軽に行けるのも大好きでした。



ムール・フリットは、ムール貝にフライドポテトを組み合わせるベルギー料理。ムール貝がさまざまな味付け(クリーム、チーズ、カレー味など)で調理されるのですが、いちばんシンプルな白ワイン蒸しが一般的なようで、メインディッシュとして、バケツに入ったムール貝を、フライドポテトをお供にひたすら食べるというものでした。


初めてこのムール・フリットを食べた時「ベルギー人ってめちゃめちゃセンス良くない? ムール貝にフライドポテトを合わせるなんて!」「ベルギー人の気概を感じるね」と、何もわかってないくせにいたく感動して、夢中になって食べたものです。


フランス人は、ムール貝もフライドポテトも大好き。ムール・フリット専門店があっても、全然不思議じゃありません。


特にフランス人が「ポンム・フリット」(フライドポテト)が大好きなのには本当に驚きました。それまでの私のイメージの中では、フライドポテトはアメリカ人のもので、ハンバーガーの添え物と思っていました。


働いていたレストランのまかないで、バヴェットステーキやプーレロティの付け合わせとして、たっぷり山盛りのポンム・フリットが 添えられた日は、皆が大喜びして食べていたのを見て「そうか、フランス人は老いも若きもフライドポテトが好きなのか」と、妙に納得しながら負けずに食べたものでした。


7月に入り、業者さんから「モン・サン・ミッシェルのムール貝が入荷しました」と一報を受け、スーシェフ香田が前々からムール貝を使いたがっていたので、すぐさま注文。「これ、ムール・フリットで店で出したらおかしいですか?」 と遠慮がちに言うスーシェフ香田。以前、深夜にまかないで食べたムール・フリットが忘れられないのだそう。


何か問題あるでしょうか? なぜならムール・フリットは、我々にとって紛れもなく「パリの味」なのですから。



ムール・フリット登場の初日、その日にご予約を入れてくださっていたお客様がサンルスーのインスタグラムを見て、早速キープのメッセージをくださいました。


いろいろ考えた末、サンルスーではムール・フリットを、メインディッシュではなく前菜としてお出しすることにしたのですが、このお客様、長いことパリでお仕事をされていたこともあり「僕のムール・フリットは、前菜じゃなくてメインで出してね。あ!その分、量はちゃんと増やしてね!」と、嬉々として食べる気満々。


「ちゃんと貝殻でつまんで食べるからね!」と、空になったムール貝の殻をトングにして、ムール貝をつまんで食べる、王道の召し上がり方はさすが! 60代の紳士があんなに無邪気に、喜んで召し上がってくださる姿を見て、失礼ながら「Iさん、 可愛い!」と思ってしまいました。


「ムール・フリットをメニューに載せても、誰も食べてくれないかも?」と、一抹の不安はありましたが「出なかったら俺たちが食えばいい」と、相変わらず 能天気なシェフ金子。でも、Iさんの喜びを目の当たりにして、不安は吹き飛んでしまいました。


それにしても、モン・サン・ミッシェルのムール貝って、どうしてこんなに美味しいんだろう? 小ぶりで、身がふっくらとして、甘くて、値段も一流だけど、それを上回る美味しさです。


今が旬のムール貝、ぜひ一度味わっていただきたいです。ムール貝とフライドポテト、この組み合わせを生み出してくれた、ベルギー人とモン・サン・ミッシェルのムール貝にカンパイ!




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