シュークルートにご用心

フランスでの食体験で、すごくいいなと思ったのが「前菜・メインディッシュ・デザート」という3本立ての食事スタイルです。決して豪華ではなく、むしろ実に質素ですが、なんとも機能的で素敵だなと感慨を覚えました。


かつて、アルザス地方へ食べ歩きの旅に赴いたときのこと。一番の目的は、本場のシュークルートを食べることでした。ずっと憧れていた、シュークルートで名高いお店に行き、もちろんメインディッシュにシュークルートを注文。



前菜、メインディッシュ、デザートを食べるという、フランスの食事スタイルを従順に遂行する、若かりし日の我々。シェフ金子が前菜に選んだのは、自分でも作るのが大好きなお肉のテリーヌ。メニューに載っていると必ず注文する一品です。


私はアシエット・ド・クリュディテ(生野菜のサラダ)。メインのシュークルートに全力投球するために軽くしたつもりですが、テリーヌもクリュディテもなかなかのボリュームです。でも、頑張って平らげました。


さて、メインのシュークルートが運ばれてきました。これは宴会料理か?と思うほどの巨大なプレートに、ドカンとシュークルートがのっています。


いくら頑張り屋の我々でも食べ切れず、残してしまったわけですが、周囲を見ると他のテーブルの人々も皆残していて、少しホッとしたものでした。


あとで冷静になって思い起こすと、前菜を食べていたのはおそらく我々だけでした。そして素直で頑張り屋(!)の我々は、デザートも律儀に注文します。


メニューに載っていると必ず注文する、これまたシェフ金子が大好きなクレームブリュレ。この日はたまたま、二人ともクレームブリュレを選びました。


そして運ばれてきたクレームブリュレの器は、まさに洗面器サイズ! 決して小さくはない我々の顔が、余裕で入ってしまうくらいの大きな器でした。あまりの量に意識が朦朧として、それを食べ切ったのかどうかも覚えていません。



それにしても、あのほとんど宴会料理状態で大量に残されたシュークルートは、その後いったいどうなっているんだろう?


「ねえ、あの残ったシュークルート、もしかして使い回してるのかな?」という私の問いかけに、「わっかんねーな、でも捨てたらもったいねーからな。使い回すだろ? 食べるときは自分の皿に取り分けてるわけだし」と、やや福島訛りで答えるシェフ金子。


こんなこと、日本でやったら大問題になりそうです。でもたとえ使い回したとしても「それがどうかした?」と肩と首をすくめて両手を広げるのが、お茶目なフランス人。いまだにあの残ったシュークルートの行方は、我々の中でフランス七不思議の一つとなっています。



そういえば、シュークルートの熱々のソーセージにナイフを入れた瞬間、この日のために新調した私のとっておきのブラウスに、たっぷりとその肉汁を浴びることとなり、あのソーセージのことは今でも恨んでいます。


サンルスーにも久しぶりにシュークルートが復活しました。シュークルートをご注文のお客様、召し上がる際、肉汁を浴びないよう、くれぐれもご注意ください。もしくは、どうでもいい服をお召しになってのご来店をお願いします!

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