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復活、幻のメニュー

今年になってからスーシェフ香田が、幻となってしまったサンルスーのメニューをしきりに再現したがっております。


長年通ってくださっているお客様が、シェフ金子や私に「前よく食べていた○○をまた食べたい」とおっしゃることがしばしばあるのですが、それを聞き逃さず、もれなく覚えているスーシェフ香田。これら幻のメニューに、異常にこだわっています。


私としても、お客様からそういうふうに言っていただくのが何とも嬉しく、幻となってしまったメニューをまたやってみたいと思うのです。ところが、やはりそこで厄介なのが、毎度おなじみシェフ金子。リクエストをすると笑ってごまかし、どうも幻のメニューを再現する気はないように見えます。



推測するに、やたらと長い料理人人生の経験から、材料の仕入れの問題や、お客様が集中する時間帯にもスムーズに全体の料理を提供するためなど、幻となるにはそれなりの理由があるのかもしれません。おそらく「今の自分の気分ではない」ものもある様子。でもほとんど喋らないので、真意のほどはわかりません。


しかし、我々も負けてはいられません。香田と私で何日もかけてシェフ金子を説得し、やっと数品の幻のメニューを引っ張り出すことができました。「アジのガレット」、「ベックオフ」、「パン ペルデュ」、「ファー ブルトン」、「焼きたてりんごの薄焼きパイ」です。


アジのガレットは、20年も前に提供していた一品。「作り方、忘れちゃった」とシラを切るので、「ほら、こうして、ああして」と教えてあげると「そんなこと言わなくてもわかってる!」と怒り出す始末。復活希望の最も多い、焼きたてりんごの薄焼きパイについては「紅玉がない」と言うので、すかさずなじみの果物屋さんに行き、山と積んである紅玉を見せて粘りました。


さて、営業が再開し、幻のメニューのオーダーが入るたび、店内は密かにしっちゃかめっちゃかになります。シェフ金子がすぐに首を縦に振らなかったのも少しわかる気がしました。しかし、もう後には引けません。リクエストしてくださったお客様のために、そして幻のメニュー未体験のお客様のために、このメニューが姿を消すことのないよう頑張らなければ!

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