テイクアウトも延長戦

日頃無口で、こちらから話しかけない限り自分から口を開くことはめったにないシェフ金子が、珍しく自ら発した言葉です。


「ボクシングで言うボディブローを受け続けてきて、回を重ねるごとにパンチが効いてきて、今回のパンチでノックアウト寸前だ」。


私にはボクシングのルールや用語はさっぱりわかりませんが、どうやら緊急事態宣言が6月20日まで再延長されたことに対する気持ちのようです。さすがに万事につけ能天気なシェフ金子にも、このパンチは効いたようです。



我々飲食店にとって、大事な稼ぎ時のゴールデンウィークを2年連続で棒に振って、17日間のつもりの3度目の緊急事態宣言が、5月いっぱいまで延長になり、「ガマン、ガマン」と自分たちに言い聞かせていたところ、さらにまた延長。でも相手はコロナ、不満をぶつける場所がありません。


考えてみたら、今年に入って店内営業をしたのはわずか1ヶ月半。これでは仕事を忘れてしまいそうです。いつも大変だ大変だと思って毎日ヘトヘトだった店内営業、今はあの緊張感とライブ感が恋しくて仕方がありません。お客様との楽しいやりとり、ワインをめぐる駆け引きが、なんだか遠い昔のことのようです。


店内営業を望まれるワイン好きのお客様S氏が、テイクアウトを受け取りにいらしたときにおっしゃいました。「6月から営業再開するんでしょ?」


「お酒が出せないなら営業できません。Sさん、ワインなしでサンルスーでゴハン、召し上がれます?」と私。するとS氏、「酒が飲めなくても、20時閉店でも、俺はサンルスーで食事がしたいんだよ。酒がないと逆に料理の味がよくわかる」。


ワイン大好き人間のお客様の、まさかの言葉に心底驚きました。なるほどそういう考え方もあるのかと、食事とお酒が常にセットになっている私は、ただただ感心するばかりです。


今の状況では、テイクアウトでしかご利用いただけないお客様もいらっしゃるし、お酒がなくても店内でお食事をしたいお客様もいらっしゃる。さて、サンルスーはいったいどうしたらいいのだろうか? 


皆で再び、真剣にミーティングです。シェフ金子、さっきから腕組みをしてずっと長いこと考え込んでいます。何を考えているかと顔をのぞき込んだら、なんと居眠りをしているではありませんか! 「ノックアウト寸前とかカッコいいこと言って、この人、全然参ってないな」とつくづく思いました。


とどのつまり、どこまで持ちこたえられるかわからないけれど、もう最後だと信じてメニューも増やすことに。6月20日まで腰を据えて、OBENTOYAサンルスーに専念することに決まりました。

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