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モロッコふう生のミントティー

信じたくないけれど、今年の夏の暑さは、去年に匹敵するかそれ以上だとか?


実際、毎日暑いです。これからは夏はこの暑さを「普通」と思わないといけないのだろうか? 誠に辛いですね。


去年の夏、シェフ金子の「暑い、暑い、ヒーヒー」攻撃に本当に懲りたので(詳しくはこちら「暑い暑いって言うな!」)、6月頃に前もって「今年は暑いって言わないでね」と念を押したところ、「言ってるつもりはないけど、どうも考えるより先に口に出てるらしい」のだそうです。


思い起こせば、今年1月のとてもとても寒いある日のこと。「あぁ、寒い。俺、寒いのって暑いのより嫌いだ」とびっくりするようなことを言っていました。一体どの口が言っているんだろうか? 本当に辛抱の足りない人間です。


この時期に、無性に恋しくなるさわやかなお茶があります。


実はほとんど知られていないのですが、サン ル スーにはオープン以来ずっとある、食後のお茶があります。俗に言う裏メニューというのでしょうか?


それが「モロッコふう生のミントティー」です。全然フランス料理ではないのですが、我々にとっては「ムール・フリット」と同じように、まぎれもなく「パリの味」なのです。



パリ5区にあるモスクは、フランスにいて中東の風情を味わえる、何ともエキゾチックな空間で、大好きでした。併設されているレストランで好物のクスクスを食べて、あまーいミントティーで締める。異国情緒あふれる雰囲気にうっとりしたものです。何より、ミントティー用のグラスがあまりにも可愛い!


パリのシテ島にあるスパイス専門店で、このミントティーのグラスを見つけた時は、「あった!」と人目もはばからず2人で叫んでしまいました。もちろん買い求めて、大切に日本に持ち帰りました。



フランスのロワール地方のホテルレストランで働いていた時、シャンブル(客室の清掃係)に、ジェマというモロッコ人の女性がいました。


当時の我々にはよく理解できないことでしたが、人種的な問題から、彼女は他のフランス人スタッフと対立していました。我々には特に彼女を嫌う理由もなく、普通に接していたのですが、彼女は何となく孤立している感じで、でも動じないものがありました。そんな姿を見て我々は 「強い人だなぁ」と思っていました。


ある日、休憩時間(フランスは夕食の時間が遅いので休憩時間がたっぷり取れます)に、ジェマが我々を「お茶に」」と、自宅に招いてくれました。


彼女がフランス人と結婚してフランスに渡る時、お母様が持たせてくれたという、素晴らしい銀食器のティーセットで、恭しくミントティーれてくれました。我々、ポカンと口を開けてジェマの手さばきに見とれていました。


 お茶のお供は「LU」のビスケットでした。フランスでとてもなじみのある、スーパー等で手軽に買えるビスケットです。こういう気負わない感じ。すごくいい! 以来、我々にとってミントティーは特別なものになりました。


サン ル スーでは、ミントが店にある時だけ、このミントティーの存在を知るお客様がご注文されます。


ポットに生のミントをたっぷりと、そしてガンパウダーズーチャという、クルッと丸まった中国の緑茶を入れ、さらに本来はこのポットの中にたっぷりの砂糖が入るのですが、好みがあるので、サン ル スーではポットの中には入れず、ご自身で甘味をつけていただきます。


これをミントティー用のグラスで飲む! グラスのおかげで、何だか本場の味わいです。



今年の春、スーシェフ香田が「これをミントティー用に、庭に植えてください!」と自ら育てたミントの挿し木を根づかせたものを我が家におすそ分けしてくれました。どうやら我々がしばしば話しているミントティーが気になっているらしい。それを香田の指示通りに植えたら、不精者の我々の手入れでも、ミントはすくすくと育ってくれました。


先日、香田が自らのミントを大量に店に持ってきたので、それでミントティーを作ってスタッフにふるまったところ、皆がことのほか喜んで何度もおかわりをしているのを見て、突然、気丈なジェマのことを思い出しました。夢中でミントティーを飲む、あの時の我々の姿と同じです。


「俺はやっぱり、砂糖を入れた方が断然好きだ」と言うデブ金子、もといシェフ金子。今年の夏はこのさわやかなミントティーを飲んで、お願いだから 「暑い暑い」と言わないで欲しいものです。



というわけで、この夏は清涼感を味わっていただくべく、「モロッコふう生のミントティー」のご注文、サン ル スーでお待ちしております!

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