top of page

28年目、20年目の6月18日

この6月18日、サンルスーは29年目に突入しました。


先日、あるおなじみのお客様が「6月18日は今のお店に移転して20年の日ですね!」とおっしゃいました。「ん? 待てよ。しまった! そう言えばそうだった!」と、人様に教えていただく始末で、全く我が事ながら記念日に疎くて反省しています。


1995年、西荻窪駅から歩いて15分以上もかかるような場所で、わずか12席の店を夫婦で始めました。駅からあまりに遠いので、ご予約の際、場所を説明するとそれだけでご来店をやめてしまう人もいれば、場所がわからないと怒り出してしまう人もいました。


「もしかしたら遠いのかな?」何かにつけてのんきな我々もようやく気づきました。「わかった! 店は駅から近い方がいい!」ある人にしたり顔で話したら、「そんなの誰だって知ってる。当たり前だよ」と、当たり前のことを言われました。


当初、サンルスー(=一文無し)故に、狭くて遠い店しか選択の余地がなかったわけですが、でも、不便で遠いということには、それなりにメリットもありました。「本当に来たい人が来てくださる」ということです。この店からもう20年以上、今でも通ってくださっているお客様がたくさんいらっしゃいます。本当にありがたいことです。



店を始めた時、「5年経ったら移転しよう!」と、なんだかもっともらしい目標を立てたくせに、元来のんびりしているので、5年なんてあっという間に経ってしまいました。でもその頃から「この店でできることは充分やった。次のステップを踏みたい」と思うようになりました。


よく考えてみれば、ご来店くださるほとんどのお客様が駅からお越しくださるので、「駅からタクシーもバスも使わなくていい場所」、つまり駅近を探すことにしました。


ここで、我々のヘンテコな性分が顔を出します。前の店は遠いけれど、飲食店では王道と言われる路面店、つまり通りに面した1階の店。実はこれが我々、嫌でたまりませんでした。「なんか、外から見られるの、嫌じゃない?」「おちおちまかないも食べられないし、昼寝もできないよ」。


5年以上店をやっていたので、通い続けてくださる心強いおなじみのお客様がいらっしゃる。「駅から近くて場所がわかりやすければ、別に家賃の高い1階でなくても大丈夫。よし、駅近で専用階段のある2階の店を探そう!」ということになり、店は営業できているので、とにかくあせらず、希望にかなう物件をじっくり探しました。


それから3年ほど経って、現在の店に出会いました。駅近、専用階段のある2階、そして決め手となったのは、天井の高さでした。



最初の店の時はあまりにもお金も信用もなさすぎて、お願いすることができなかった憧れの建築家の先生に、内装をお願いすることができました。シェフ金子が独立前にあるフランス料理店の内装を見て「俺もいつか、このデザイナーさんにお願いしたい」と心に決めていた方です。


そして2003年、記念日とかにとりわけ関心の薄い我々は、忘れないように、最初の店と同じ6月18日に、現在の店をオープンしました。


移転して20年。お客様に教えていただいて知った衝撃の事実ではありますが、この店でもう20年やってこれたことを思うと、ただただ一言「ありがたい」という言葉しか浮かんできません。


サンルスー自慢の善良で温かいお客様に、ひたすら感謝するのみです。



最新記事

すべて表示
bottom of page