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32年目も、通ってくださる店に

  • 7 日前
  • 読了時間: 3分

更新日:6 日前

「キツいのは皆同じだよ」

いつも「どうしよう?」と困り果てている私に、他人事みたいな呑気な言葉が、シェフ金子から返ってきます。


今や日本中、いえ、世界中のすべての人に関わっていることですが、ありとあらゆるものの値上がりがあまりにも凄まじい。本当にこれまで経験したことのない事態に陥っています。もしかしたらコロナ禍より精神的にキツいような気がしています。


店を30年以上やってきて、「売り上げがこれくらいだから、支払いはだいたいこれくらい」という感覚が身についていましたが、請求書を見て「何これ!何か間違ってるんじゃないの?」と驚愕する日々です。


さらに最近の中東情勢の問題から、ますます値上がりに拍車がかかる上に、今まで当たり前に使ってきたものが、当たり前のことのように手に入らなくなったり、何週間も入荷待ちになったり、ということが日常化してきました。


「こんなご時世に、お客様に申し訳ないなぁ」という思いから、なかなか踏み切れずにいましたが、もう、にっちもさっちもいかず、サン ル スーはこの5月に、価格を改定させていただきました。でも、それを遥かに上回る値上がりが襲いかかっていて、今なお、毎日毎日「値上げ」のお知らせが届いています。「焼け石に水って、こういうことを言うのか……」と身をもって感じています。


同じ飲食店を営む方々と話をしても、皆さん一様に悲鳴をあげていて、話題はこのことで持ちきりです。「このままでは足が出るばかり」と、やめてしまわれるお店も何軒も見てきました。とても寂しいです。と同時に、「店をやめれば、もうお金や支払いのことを考えなくていいのか」と羨ましく思ってしまいます。


収支のバランスが取れていない中、「こんな世の中になってしまって、店をやる意味ってあるのかなぁ?」シェフ金子に問いかけても、聞こえていないみたいなので、日々、色々と自問自答しています。


そんな迷いの中、ここのところ、以前通ってくださっていたけれど、お子さんができてしばらくご無沙汰になっていたお客様が、十数年ぶりに「子供がやっとサン ル スーで食事ができるようになった」とご家族で来てくださったり、「子供が大きくなったから、またサン ル スーで二人で食事ができる!」とご夫婦で来てくださったりすることが、とても増えてきました。



「こんなに時間が経っても、サン ル スーを覚えていてくれたんだ!」とてもとても嬉しいです。


また、子供の頃からご両親と共に通ってくださっていたお客様が、立派な社会人になって、結婚相手を連れてきてくださったりする場面も、これまた増えてきました。すると、親でもないクセに、なんだか肩の荷が下りたような気持ちになっています。本当に大きなお世話です。



新しいもの、流行っているものに左右されがちな日本で、価格が上がっても、何事もないように相変わらず通ってくださるお客様。いつも、お顔を見るだけで本当にホッとします。間はあいても忘れずに、十数年ぶりにご来店くださるお客様(中には二十数年ぶりの方もいらっしゃいました)。そんなことがあると、とても元気になります。


「忘れないでいてもらって、本当に有難い」と言う私に、「ほら、だから店をやってる意味って、ちゃんとあるんだよ」と、偉そうに答えるシェフ金子。


……なんだ、私の問いかけ、聞こえてるじゃないの。だったら、ちゃんと返事をしたほうがいいと思いますよ!


そんなこんなで、サン ル スーはこの6月18日、なんとか32年目に突入することになりました。


お客様が来てくださる、だけではなく、「通ってくださる」店を目指して、32年目も頑張ろう!

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西荻窪(東京都杉並区)のフランス料理店 ビストロ サン ル スー

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